ケースレポートについて(1)

[2020.1.27]
准学校心理士資格認定委員会委員長
大野精一(星槎大学大学院 教授・研究科長)

学校心理士の受験にはケースレポートの提出が必要ですが,そもそもケースレポートを書く場合に何が重要となるのでしょうか。
最低限度必要不可欠な事項については手引きをご覧いただくことにしていただき,ここでは5つのポイントを教育実践の立場から箇条書きにしています。

1)ケース(事例)の全体が構造的に記述されているか。
ケースというものが一つの具体的な実践例であるならば,ケースそのもの(図)の,そしてケースを取り巻く環境(地)の二つの記述が必要です。
しかもそれらが単に羅列されているのでなく,構造的な繋がりがあるものとして記述するとともにこの二つの連関も書くことになります。

2)実践者の関わりが具体的に記述されているか。
ケース(事例)への対応は実践者の計画的組織的な営為である以上,実践者はどのような意図の下で何をしたのか。
そうすることの判断基準は何かということについて具体的で詳細な記述が必要です。実践者の専門的な実務能力はここから判定されます。

3)対象者等の変化が明確に記述されているか。
ケース(事例)への関わりによって援助対象者やグループ,クラス(学級),学校等は援助の起点と比べてどのような変化(一時的あるいは継続的,潜在的あるいは顕在的,部分的あるいは全体的,単独あるいは全体等の視点)が生じているかについてはっ りとわかるような記述が必要です。

4)スーパーバイザーの意見等を的確に把握した上で指導援助した経過等が記述されているか。
ケース(事例)への対応には当該分野における専門家や管理責任者等との作戦会議・協議(広義のコンサルテーションconsultation)が不可欠です。
的確に専門家等にケース(事例)を説明でき(広義のアカンタビリティaccoutability),それを援助者として主体的創造的に取り入れて指導援助を行う(広義の応答責任responsibility)ことが重要です。

5)今後の展望が省察的に記述されているか。
指導援助対象者や実践者本人の今後の課題がケース(事例)の記述に即して考察され,各自あるいは相互の発展・成長の契機をケース(事例)からつかみ取ることが求められています。
このためにはケース(事例)に関連した文献を見つけ出して読み込むことも大切です。(続)