学校心理士のNEXT10をめざして:資格から職業へ


 1997年に「学校心理士」の資格認定が始まってから、12年が経とうとしています。現在は約3800名の学校心理士が、教員、スクールカウンセラー、教育センターの相談員などの職業で、子どもや学校を援助しております。
 この10年あまりの間に、「学校心理士」は、ゆっくりですが、確実に社会的に認知されてきております。それは、私たち学校心理士のていねいな心理教育的援助サービスの実践と学校心理士全国大会や関連学会等での実践・研究に関する発表の成果だと思います。
 
1 教育相談に関する報告書
 この度、平成19年〜20年に開かれた文部科学省の「教育相談等に関する研究協力者会議」の報告書として「児童生徒の教育相談の充実について−生き生きした子どもを育てる相談体制づくり−」が出されました。平成20年には、学校心理士の機構からの代表者が、本会議において、教育相談に関する学校心理士の貢献について発表し、教育相談の今後について提案する機会がありました。本報告書は、私たちの意見が反映されております。そして、今年の6月29日(月)には、教育カウンセラーや学校心理士などの関係者からなる「スクールカウンセリング推進協議会」において、文部科学省児童生徒課の高橋正敏課長補佐と客野英司専門職のお二人が、本報告書に関して説明をしてくださいました。報告書の主な内容を紹介しながら、学校心理士の職業に関する展望を述べます。
 
2 スクールカウンセラーの活用
 「学校で求められるスクールカウンセラーに対するニーズは様々であり、ニーズや実態を踏まえた配置を行うとすると、臨床心理士だけではなく、それぞれの資格の持つ得意分野や手法をいかすことも考えられ、臨床心理士以外の教育カウンセラー、学校心理士、日本心理学会認定心理士などの教育・心理のカウンセラー資格の積極的な活用も意味がある」と、報告書にあります。これを受けて、平成21年度の「スクールカウンセラー等活用事業実施要領」では、「スクールカウンセラーに準ずる者」を選考する際、「地域や学校の実情を踏まえ」、「スクールカウンセラー」の任用よりも「合理的であると認められる場合に行うことができる」となりました。つまり、「スクールカウンセラー」と「スクールカウンセラーに準ずる者」を合わせて「スクールカウンセラー」として理解するという枠組みになり、地域や学校のニーズに合う者をスクールカウンセラーとして採用できるようになったのです。したがって学校心理士が、自らの得意分野を発揮して、スクールカウンセラーとして活躍できる機会が増えてきます。

3 教育相談、生徒指導、特別支援教育などに関する校内の体制
 今回の報告書で強調されているのが、「学校種や学校規模を考慮し、学校の実情に応じた学校内の教育相談体制を構築する必要がある。その際、教育相談、生徒指導、特別支援教育などの校内組織が有機的に連携していることが重要である」という点です。つまり、教育相談充実のためには、校内の体制の充実が必要であり、教育相談、生徒指導、特別支援教育などに関して、教育相談の「全体を見渡せる人、つまりコーディネートする人材(教職員)が置かれることが望ましい」とされています。まさに今鍵を握るのは、「チーム援助」であり、「教育相談体制」です。そして学校心理士資格など心理教育的援助サービスの専門性をもつ教員が、教育相談、生徒指導、特別支援教育の「総合的なコーディネーター」として活躍することが求められているのです。

4 「学校心理士」が資格から職業へと進む意義と課題
 現在、「学校心理士」は心理教育的援助サービスの専門性を示す資格です。しかしながら学校心理士資格は、まだ特定の職業に結びついてはいません。今後の学校心理士の職業的展望は、スクールカウンセラーの資格の一つとしての確立、そして「支援教諭または相談教諭(心理教育的援助サービスの専門性の高い教員)」(仮称)という職業の誕生です。
学校心理士が資格から職業に進むためには、資質の向上が欠かせません。学校心理士資格認定委員会では、「学校心理士資格取得のための大学院における関連科目の新基準(案)」を準備しております。それは、学校心理士の資質を保証するとともに、学校心理士資格審査の信頼性を高めるためです。関連科目は、「学校心理学」および「教授・学習心理学」「発達心理学」「臨床心理学」(コアとなる心理学的基盤)、「心理教育的アセスメント」「学校カウンセリング・コンサルテーション」(心理教育的援助サービスの理論と技法)、「特別支援教育」「生徒指導・教育相談、キャリア教育」(学校教育に関する理論と技法)の8科目、そして「心理教育的アセスメント基礎実習」「学校カウンセリング・コンサルテーション基礎実習」の2つの実習科目からなります。すでに学校心理士をもつ者も、この基準を参考に、自らの援助サービスの能力を振り返り、資質向上の努力をしていく必要があります。
 
 子どもや学校が苦戦する今、学校心理士など心理教育的援助サービスの専門家が求められています。これまで以上に、良質の心理教育的援助サービスの実践を行いながら、私たちの援助サービスの資質を向上させて、学校心理士の活動の場を広げ、学校教育に貢献する機会を増やす方向で運動していきましょう。

参照:教育相談等に関する調査協力者会議2009 児童生徒の教育相談の充実についてー生き生きした子どもを育てる相談体制づくりー